YAおすすめ今月の1冊【2024年11月】
『あきらめなかった男 大黒屋光太夫の漂流記』 小前 亮/作 おとない ちあき/画 静山社

1783年(江戸時代)、貨物船「神昌丸」の船頭大黒屋光太夫と船乗りたちは伊勢国白子港(三重県鈴鹿市)から江戸へ向かう途中で嵐に遭い、何ヶ月もの漂流の果てにロシアの孤島にたどり着きました。 食料も船も失い、言葉も通じない異国の地で船の仲間も次々と倒れていくなか、島民やロシア人に助けられながら約4年後、自分たちで船を作って島から脱出しロシア本土に到着しました。しかし、いくら待っても日本への帰国の許可がおりません。そこで、光太夫は意を決し、ロシア帝国女帝エカチェリーナ二世へ直談判をしにはるか遠くの帝都サンクトペテルブルクへ向かうのでした。 このお話は史実を基に書かれています。病気で命を落とした者、極寒のシベリアで足を失った者、ロシア語を独学でマスターした者、ロシアの女性と結婚した者…。船乗りたちの様々なドラマが描かれています。 また、光太夫たちの足跡の地図もあるので、いかに途方もない年月を旅してきたかが実感できるでしょう。 いくつもの困難を乗り越え生き延びることができたのは、絶対に帰国するんだ!という光太夫のあきらめない精神があったからこそ成し遂げられたと思います。 帰国までの10年間にもわたる壮大な物語です。 |