YAおすすめ今月の1冊【2025年11月】
『スネークダンス』
佐藤まどか/作 小学館

| 主人公の圭人は14歳、イタリアの首都ローマで生まれ育った。芸術の都ローマには歴史ある建物も数多く残されている。圭人はそんなローマの建物や古い街並みをスケッチするのが好きだ。 ところが父親が亡くなったことを機に、母と日本に帰国し東京下町で暮らすことになる。日本に来てからも、ローマのときと同じように、東京の気に入った建物や街並みなどをスケッチしたりして新しい環境に慣れようとしていたが、心の中には自分はなぜスケッチをするのか? 何になりたいのか? そんな思いを抱えていた。 ある日、取り壊し予定の建物にスプレー缶で落書きしている人物を目撃する。それは、隣のクラスの中山歩(あゆむ)という女生徒だった。彼女は古い木造建築を取り壊すことへの抗議としてグラフィティを描いていたのだ。圭人は歩と言葉を交わすようになる。歩の行動や考えに触れ、圭人は、自分がなぜスケッチをしたくなるのか、何になりたいのか、自分の心と向き合っていく。 タイトルの『スネークダンス』とは法隆寺の五重塔(の心柱)に使われている耐震構造のことで、揺れに抵抗するのではなく揺れを吸収するように一緒に揺れることで地震がきても倒壊しないですむのだそうです。 圭人の様々な出会いや経験、思いに触れながら、イタリアと日本の文化や価値観の違いに気づかされたり、また日本の伝統文化を見直すきっかけにもなるのではないでしょうか。 |
