YAおすすめ今月の1冊【2023年6月】
『博物館の少女 怪異研究事始め』 富安 陽子/著 偕成社

明治時代、大阪の道具屋の娘に生まれたイカルは両親の死をきっかけに、亡くなった母親の知人である大澤夫妻を頼って東京へ行くことになります。 ところが、大澤夫妻は礼儀に厳しく、イカルはすぐに息苦しさを感じます。次第に家を出ていきたいと思うようになりますが、他に頼るところのないイカルはその家にいるしかありません。 そんな中イカルは大澤夫妻の孫、トヨと一緒に博物館へ行きます。道具屋の娘として、道具を見る目と知識が豊富にあったイカルは夢中で博物館の展示品を眺めます。 興味津々のイカルに博物館の人はトノサマと呼ばれる人物を紹介してくれます。 東京へ来てから楽しいことなんて全くなかったイカルですが、この出会いで暮らしが一変していきます。 トノサマが管理している蔵は博物館の所蔵品の中でも、不思議なモノばかりが集まった蔵でしたが、ある日蔵は何者かに荒らされ黒手匣(くろてばこ)という箱が盗まれていました。 誰に聞いても大したことはないただの箱だったという黒手匣をだれが何のために盗んだのか。 イカルは黒手匣にまつわる、不思議な謎に巻き込まれていきます。 両親や居場所を失って独りぼっちになってしまったイカルが特技を活かして活躍の場を手にしていく姿に、思わず「ガンバレ!」とエールを送りたくなります。 黒手匣にまつわる意外な結末が待っていて、怪異がちりばめられたストーリーもとても面白い作品です。 |