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-----------------------2018.AUGUST---------------------

『凍てつく海のむこうに』 ルータ・セペティス/作 野沢 佳織/訳 岩波書店


 ナチス・ドイツ軍の敗戦の色が濃くなってきた第二次世界大戦末期、孤立したドイツ領の東プロイセンはソ連軍に進攻されようとしていました。  そこでナチス・ドイツは東プロイセンの住民をバルト海の港から船でドイツにのがれさせようとします。 その船の名前は大型客船ヴィルヘルム・グストロフ号。 しかし、グストロフ号はたくさんの避難民をのせて吹雪の中夜の海に沈んでしまうのです。 死者の数はあの有名な「タイタニック」よりもはるかに多い一万人でした。
 そんな時代に生きた4人の若者がこの本の主人公です。 その内の3人はリトアニアからの避難民。 ヨアーナは21歳の美しい女性で東プロイセンでは有能な外科医の助手でした。 フローリアンはヨアーナよりいくつか年下で端正な顔立ちの謎の多い若者。 エミリアはひとりぼっちの15歳のポーランド人の少女。 偶然一緒になった彼らは、ソ連軍の砲弾が飛び交い幼い子供やお年寄りや弱い人たちが次々と命を落としていくなか、 飢えや寒さに苦しみながら必死でバルト海の港を目指します。  一方、もう1人の若者、17歳のドイツ人の兵士のアルフレッドはヒトラーを盲信し、  自分の弱さから目をそむけ、いつか英雄になりたいと思っていました。 アルフレッドは港に避難してきた3人と出会います。そして、この4人の若者はグストフ号に乗船するのです。
 それぞれが秘密をかかえ、罪の意識やつらい記憶や後悔に苦しみながらも、必死に生きようとします。  その秘密がなんなのか。読み進むにつれて4人の若者の生い立ちや家族のことが分かってきます。
 作者の父はリトアニアからの亡命者で、お父さんの従妹はヴェルヘルム・グストロフ号に乗っていたそうです。  彼らから聞いた話をもとに、作者は自分が書かなければとの強い思いでこの本を書いたそうです。