YAおすすめ今月の1冊【2026年11月】
『シンプルとウサギのパンパンくん』
マリー=オード・ミュライユ/著 河野万里子/訳 小学館

| 高校生のクレベールには兄がいます。知的障碍があって、いつもぬいぐるみのウサギのパンパンくんと遊んでばかり。本当はバルナベという名前ですが、シンプルという愛称で呼ばれています。 母は亡くなり、父は再婚を機にシンプルを施設に預けました。でも施設でのシンプルの扱いに耐えかねたクレベールはシンプルを連れ出して兄弟で暮らすことにしたのです。 何とかルームシェアの物件を見つけた二人ですが、障碍のある兄との暮らしは簡単ではありません。クレベールは学力優秀で、女の子との出会いにも胸を膨らませています。なのに三歳児のような兄が次から次に問題を起こすし、それをパンパンくんのせいにする始末! 世間の目も優しくはありません。 ルームメイトたちも初めは戸惑いっぱなし……彼らは等身大の若者で、障碍を持つ人との暮らしに慣れてはいないのです。 しかし、そんなルームメイトたちが、少しずつシンプルを受け入れ、クレベールの助けになっていきます。 それは、シンプルが彼らに思わぬ変化をもたらし、かけがえのない存在となっていくからです。 シンプルはとても「シンプル」です。自分の感情に素直で、飾ることをしません。 クレベールがそうであるように、私たちはとても「フクザツ」です。自分を自分の思わない形に押し込めて、時には大切な相手に好きだと伝えることさえ難しくなってしまいます。そんな時、シンプルの存在が思い出させてくれるのです。「フクザツ」な心の中には、きっと誰にでも「シンプル」な自分の感情が眠っていることを。 あなたも本書を読んで、忘れた気持ちを探しにいきませんか。 それはひょっとすると――古ぼけた悪戯好きのウサギの形をしているかもしれません。 |
